新規国際標準試料・IAEA-603

安定同位体比分析では、国際標準と相対的な値のずれから、サンプルの同位体比を決定します。

標準物質も限りのあるものなので、ずっと使い続けられるものではありません。

たとえば炭酸塩試料の場合、PDB(PeeDee層産 Belemnite)はすでに枯渇してしまい、PDBで値付けされたNBS19(1995年9月 販売開始)がIAEAから販売されました(VPDBと表記)。さらに最近では、NBS19は、IAEAではOut of stock(在庫切れ)になってしまいました。


そこで、数年前より、IAEAにより、NBS 19の代替物質の製造がすすめられました。

それが、IAEA-603です。


IAEA(国際原子力機関)のIAEA-603のページはこちら。


基になっている岩石は、イタリア・カッラーラ地方産の大理石です(Carrara marble)。国際標準物質として販売されているIAEA-CO-1(1995年9月販売開始)と同じ岩石ですが、製造方法やサンプルの保管方法を改良しています。


本題です。

茨城高専には微量炭酸塩同位体分析システム(MICAL3c+Isoprime 100)があります!

↓装置写真・動画等はこちら。

これまでも、石村豊穂博士らによりNBS 18、NBS 19、IAEA-CO-1、IAEA-CO-8について、標準物質の1粒ごとの同位体比を測定し、標準物質の均質性の評価が行われてきました(Ishimura et al., 2004, 2008, RCM)。


 今回、ニューリリースしたIAEA-603についても、Grain-scaleで同位体比を測定し、均質性評価を行いました(Nishida and Ishimura, 2017, Rapid Communication in Mass Spectrometry)。 粒ひとつひとつを測定したところ、炭素同位体比で+2.46 ± 0.04‰、酸素同位体比で-2.36 ± 0.18‰(Average ± 1 SD, N = 20)という分析値が得られました。このSD値はNBS 19と同じくらいで(Ishimura et al., 2008)、Grain-scaleでも均質な標準試料であることがわかりました。ただし、1パーセントほど含まれる白い粒(99%は透明質な粒)はやや酸素・炭素同位体比とも低い値を示し、少量のIAEA-603を使って値付けをする際には、注意が必要です。


↑Elementar 社のTwitterで紹介していただきました。