マイクロスケールでみる貝殻の世界 ~結晶のかたちは何で決まる?

貝類の殻はいろいろな形、色があって、古くから人間の道具や装飾品として親しまれてきました。

貝殻はミクロな世界でも、多様な形をしています。


 ↑電子顕微鏡写真


貝殻は炭酸カルシウムでできています。

この炭酸カルシウムの結晶の形や配列、構成鉱物(アラゴナイト、カルサイト、バテライト)などから、生物源炭酸塩の結晶は古くから分類が行われてきました。これを微細構造と呼び、特に貝類は多様な微細構造を持っていることが知られています。


私は学部時代から微細構造研究に取り組んできました。

電子顕微鏡下で見るバイオミネラルの世界はとても魅力的です。


はじめは深海種の微細構造の観察をしていました(深海、湧水場という特殊な環境下の殻形成をしらべるため)。貝が生まれてから採取されるまで時系列に殻を観察してみると、複数種の微細構造を作り変えていることに気付きました(Nishida et al., 2011)。そして、それらの微細構造は分類の基準に沿って分けてみたものの、でき方のメカニズムは共通していて、何らかの要因(殻成長速度や生理的要因)によって結晶のかたちや配列が変わっているのではないかと考えました。


このような貝殻の結晶形成をスイッチさせる要因は何なんだろう?そして、微細構造を変えることは貝にとってどんな意味を持つのだろう?という問いを明らかにしたいと思い、東大に進学後の博士課程時代には、これを検証しやすい浅海種を用いて研究に取り組みました。


まず取り組んだのは、とにかく数をみること。

どういった分類群で、微細構造の変異が起こるのか、ざっくり二枚貝類全体を網羅するように観察を行いました。複数の分類群でこの現象を観察することができましたが、ここで、研究対象種を絞りました(ここまでで半年くらい)。

アカガイとそれを含む亜科で共通して、貝のつくる微細構造が周期的に変異していることが分かりました。水産有用種ということもあって、入手しやすいこともあり本グループをD論で重点的に扱うことにしました。

水産関係の知り合いがいなかったので、とにかく、アカガイが取れそうな産地の漁協や県の水産試験場に電話やメールで問い合わせをしまくり、何とかサンプルを集めました。学生の研究に快く協力してくださったみなさまには本当に感謝しています。あと、テーマを自由に選び、自由にあちこち飛びまわって研究をさせてくれた&サポートしてくださった指導教官にも、とても感謝です。。


つづきます